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労使協定の記載事項(派遣法30条の4第1項)

労使協定には、次の1.から6.までに掲げる事項を記載しなければなりません(労働者派遣法第30条の4第1項各号)。

  1. その待遇が労使協定で定めるところによることとされる派遣労働者の範囲
  2. 派遣労働者の賃金の決定方法
  3. 公正な評価に基づく賃金の決定
  4. 賃金を除く待遇の決定の方法
  5. 段階的かつ体系的な教育訓練
  6. その他の事項

派遣元は、厚生労働省令で定める一定の基準以上の賃金等の待遇を派遣労働者に図ることを定めた労使協定を労働組合又は労働者の過半数代表者と締結した場合は、労働者派遣法第30条の3(派遣先均等・均衡方式)の規定は、その労使協定の対象となる派遣労働者に対しては適用しなくても構いません。

ただし、労使協定で定めた賃金額以上の額を派遣労働者に支払わなかったり、派遣労働者の評価が公正に行われていなかったりした場合は、労使協定方式ではなく、原則の派遣先均等・均衡方式を遡って適用されます。

1.その待遇が労使協定で定めるところによることとされる派遣労働者の範囲

全ての派遣労働者を一律に労使協定の対象とするのではなく、派遣労働者の職種雇用期間の有無等(有期雇用か無期雇用かなど)の特性に応じて、労使協定の対象とするか否かを判断すべきものであることから、労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を労使協定に定めることとしたものです。

なお、一つの派遣元事業主において、派遣先に雇用される通常の労働者との均等・均衡によりその待遇を決定する者と労使協定によりその待遇を決定する者が併存することはあり得ることとされています。

労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を定めるに当たっては、職種(一般事務、エンジニア等)や労働契約期間(有期、無期)などといった客観的な基準によらなければなりません。また、客観的な基準であったとしても、性別、国籍等、他の法令に照らして不適切な基準によることは認められません

この他、例えば、労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を「賃金水準が高い企業に派遣する労働者」とすることは、労使協定方式を設けた趣旨に照らして適当ではないこととされています。

これらの事項が遵守されている場合には、実際にどのような範囲を定めるかは基本的に労使に委ねられるが、当該範囲の設定については、労使協定制度の趣旨に沿って労使協定の対象となる範囲を定めることが望ましいこととされています。

2.派遣労働者の賃金の決定方法

「賃金」の範囲は、労働基準法の賃金に含まれるかどうかにより判断し、基本給のみならず諸手当も含まれることに留意することが必要です。

労使協定に定める賃金の決定方法は、次のⅰ.及びⅱ.を満たさなければなりません。ただし、職務の内容に密接に関連しない賃金(例えば、通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当が考えられるが、名称の如何を問わない。)については、職務の内容、職務の成果等に応じて決定することになじまないものであることから、Ⅱ.の要件を満たす必要はないこととされています。

  1. 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金(以下「一般賃金」という。)の額と同等以上の賃金の額となるものであること
  2. 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されるものであること

これは、派遣労働者の待遇について、派遣先に雇用される通常の労働者との比較ではなく、様々な派遣先に雇用される通常の労働者一般との比較において一定の水準を確保しようとするものであることとされています。

ⅰ.については、具体的には、派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む地域において派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者であって、当該派遣労働者と同程度の能力及び経験を有する者の平均的な賃金の額と同等以上であることが必要である(規則第25条の9)こととされています。この比較対象となる一般賃金の具体的な額、同等以上の確認方法等については、別途通知により示すこととされています。 

ⅱ.については、職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項のうちどの事項を勘案するか、その事項をどのように勘案するかは、基本的には労使に委ねられるものであるが、手当を追加支給すること、新たな派遣就業の機会を提示することなど、就業の実態に関する事項の向上があった場合の具体的な措置の内容を労使協定に記載することが求められることとされています。 

なお、常時10人以上の労働者を使用する派遣元事業主は、労働基準法第89条に基づき、賃金の決定等に関する事項を就業規則に記載し、労働基準監督署に届け出なければならないこととされていることに留意することとされています。

具体的には、厚生労働省の職業安定局長が毎年6月から7月頃を目途に、派遣労働者専用の派遣労働者が従事する職種ごとのの賃金統計(「職業安定局長通達」といいます。)を公表しますので、その賃金統計以上の賃金を派遣労働者に支払うことを定めた労使協定を労働組合又は派遣元のすべての労働者の過半数代表者と締結して、その締結した労使協定にしたがって派遣労働者の賃金額を決定することとなります。

3.公正な評価に基づく賃金の決定

派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価され、賃金の改善に反映されるよう、適切な評価方法を定めることが必要であることとされています。

評価の具体的な方法としては様々なものが考えられるが、例えば、

  • キャリア(スキル)マップを整備し、一定期間ごとに能力評価、派遣就業の状況の確認等により、派遣労働者の就業の実態の当てはめを行うこと
  • 派遣労働者と面談して成果目標を設定し、一定期間後に達成状況について改めて面談を行って評価を決めること

など、公正さを担保する工夫がなされていることが必要であることとされています。なお、正社員の評価方法と同様の方法により派遣労働者の評価を行うことも考えられることとされています。

4.賃金を除く待遇の決定の方法

派遣労働者の待遇(賃金を除く。以下同じ。)のそれぞれについて、派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く。以下同じ。)の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違が生じることのないものでなければならないこととされています。

なお、この「待遇」には、労働者派遣法第40条第2項の教育訓練及び同条第3項の福利厚生施設は含まれないことに留意することとされています。。

5.段階的かつ体系的な教育訓練

教育訓練計画に基づき、段階的かつ体系的に実施されるものでなければならないこととされています。

6.その他の事項

  • 有効期間(規則第25条の10第1号)
    労使協定は、その対象となる派遣労働者の待遇の根拠となるものであり、労働者の入れ替わりがあるため、労使協定で明らかにしておくこととするものであることとされています。具体的には、労使協定の始期と終期を記載することが必要です。

    有効期間の長さについては、その対象となる派遣労働者の待遇の安定性や予見可能性、実務上の対応を考慮すれば長くすることが考えられる一方で、労働者の意思を適正に反映することを考慮すれば短くすることが考えられるため、画一的な基準を設けることとはしていないが、目安として2年以内とすることが望ましいこととされています。

    なお、労使協定の有効期間中に一般賃金の額が変更された場合には、有効期間中であっても、労使協定に定める派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額であるか否かを確認することとされています。派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額でない場合には、労使協定に定める賃金の決定方法を変更するために労使協定を締結し直す必要があることとされています。。一方、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額である場合には、派遣元事業主は、同等以上の額であることを確認した旨の書面を労使協定に添付することとされています。
  • 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合には、その理由(規則第25条の10第2号)
    労使協定の対象となる派遣労働者の範囲が、労使合意のもとで適正に定められるようにすることを担保するためのものであることとされています。具体的な理由としては、例えば、「派遣先が変更される頻度が高いことから、中長期的なキャリア形成を行い所得の不安定化を防ぐため」と記載することが考えられることとされています。

  • 特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約に係る派遣労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者であるか否かを変更しようとしないこと(規則第25条の10第3号)
    派遣労働者の待遇決定方式(派遣先均等・均衡方式又は労使協定方式)が、派遣先の変更を理由として、一の労働契約期間中に変更されることは、所得の不安定化を防ぎ、中長期的なキャリア形成を可能とする労使協定制度の趣旨に反するおそれがあることから、特段の事情がない限り、認められないことを記載するものであることとされています。

    「特段の事情」とは、労使協定の対象となる派遣労働者の範囲が職種によって定められている場合であって派遣労働者の職種の転換によって待遇決定方式が変更される場合、待遇決定方式を変更しなければ派遣労働者が希望する就業機会を提供できない場合であって当該派遣労働者から合意を得た場合等のやむを得ないと認められる事情がある場合が考えられることとされています。

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