令和3年(2021年)に施行された労働者派遣法の改正は、派遣元事業主にとって大きな転換点となりました。特に「キャリアアップ措置」や「雇用安定措置」に関する責務の強化は、派遣労働者の処遇改善を目的とした重要な改正です。しかし、施行から数年が経過した今、これらの改正内容が現場で十分に活かされているか、改めて見直す必要があるのではないでしょうか。

改正の背景と目的

派遣労働者は、正社員と比べてキャリア形成の機会が限られているという課題が長年指摘されてきました。令和3年の改正では、こうした状況を改善するため、派遣元事業主に対して教育訓練やキャリアコンサルティングの提供を義務付けるとともに、雇用安定措置の実効性を高めるための制度的整備が行われました。

主な改正ポイント

1. 雇入れ時の説明義務(令和3年1月1日)

派遣元事業主は、派遣労働者の雇入れ時に、教育訓練計画やキャリアコンサルティングの内容を説明する義務があります。これは、派遣労働者が自身のキャリア形成に関する支援内容を理解し、納得した上で働き始めることを目的としています。また、教育訓練計画に変更があった場合には、速やかに派遣労働者に説明することも義務化されました。

■派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、キャリアアップ措置(教育訓練やキャリアコンサルティングの内容)について説明することが必要となりました。
【労働者派遣法施行規則第25条の14第2項第4号】
■また、教育訓練計画の内容やその変更について、派遣労働者に説明を行うことが必要となりました。【派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針第2の8(5)ロ】

2. 雇用安定措置に関する希望の聴取(令和3年4月1日)

派遣元事業主は、特定有期雇用派遣労働者に対して、雇用安定措置(例:派遣先への直接雇用依頼、新たな派遣先の提供、無期雇用への転換など)の希望を聴取し、その内容を派遣元管理台帳に記載する義務があります。この改正により、派遣労働者の意向を尊重した雇用継続の支援が求められるようになりました。

■これまでも、派遣元事業主は、一定の場合、派遣労働者の派遣終了後の雇用を継続させるための措置(雇用安定措置)を講じる必要がありましたが、当該雇用安定措置を講じるにあたっては、予め派遣労働者から希望する当該措置の内容を聴取することが義務化されました。
【労働者派遣法施行規則第25条の2第3項】
■また、派遣労働者から聴取した内容について派遣元管理台帳に記載を行うことが必要となりました。【労働者派遣法施行規則第31条第10号】

3. マージン率等のインターネットによる情報提供(令和3年4月1日)

派遣元事業主は、マージン率(派遣料金と派遣労働者の賃金の差額割合)や教育訓練の内容、労使協定の有無などの情報を、インターネットを通じて広く公開することが義務付けられました。これは、派遣労働者や派遣先企業が情報にアクセスしやすくすることで、透明性を高める狙いがあります。

■マージン率等(※)については、原則として、インターネットの利用による情報提供が必要となりました。【労働者派遣法施行規則第18条の2第1項、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針第2の16 】(※)事業所毎の派遣労働者数、派遣先数、マージン率(派遣料金の平均額・派遣労働者の賃金の平均額)、教育訓練、労使協定の締結の有無(労使協定の範囲、有効期間)(注)下線部はこれまでも情報提供の対象項目ですが、新たにインターネットによる情報提供が必要となる項目です。
■「人材サービス総合サイト(厚生労働省運営)」による情報提供(無料)も可能です。

実務への影響と対応のポイント

これらの改正は、単なる法令遵守にとどまらず、派遣労働者の満足度や定着率の向上にもつながる可能性があります。特に教育訓練やキャリアコンサルティングは、派遣労働者のスキルアップを支援する重要な施策です。

派遣元事業主としては、以下の点を改めて確認・整備することが求められます。

  • 教育訓練計画の策定と説明資料の整備
  • キャリアコンサルティングの実施体制の構築
  • 雇用安定措置の希望聴取の仕組みと記録管理
  • マージン率等の情報公開ページの更新

HRストーリーズ社会保険労務士法人のサポート

HRストーリーズ社会保険労務士法人では、派遣業界に精通した社会保険労務士が、これらの制度対応を実務レベルでサポートしています。具体的には以下のような支援を行っています.

  • 教育訓練計画の策定支援と運用アドバイス
  • キャリアコンサルティング体制の構築支援
  • 雇用安定措置の記録・台帳管理の整備支援
  • マージン率等の情報公開ページの作成・更新支援
  • 労働局調査対応や行政指導への実務的アドバイス

制度対応に不安を感じている派遣元事業主の皆様は、ぜひ一度ご相談ください。現場に即した実践的な支援で、法令遵守と企業価値の向上を両立させるお手伝いをいたします。

今こそ、制度の「再点検」を

令和3年の改正から時間が経過した今、制度の形骸化を防ぐためにも、派遣元事業主は改めて自社の対応状況を点検する必要があります。派遣労働者のキャリア形成と雇用の安定は、企業の持続的な成長にも直結する重要なテーマです。

「忘れていませんか?」という問いかけは、単なる注意喚起ではなく、派遣労働者の未来を支える責任を再認識するためのメッセージです。