派遣元事業主に求められる「事業報告」とは
労働者派遣事業を営む事業主には、毎事業年度ごとに「事業報告書」および「収支決算書」を作成し、厚生労働大臣(実務上は管轄労働局)へ提出する義務があります。これは労働者派遣法第23条に基づくもので、派遣事業が労働力需給調整システムとして適正に機能しているかを確認するための重要な制度です。
厚生労働省が公表している通知・解説資料(令和6年版)では、これらの報告書について、記載内容・提出期限・実務上の留意点が詳細に整理されています。本稿では、派遣実務に精通した社会保険労務士の視点から、特に重要なポイントを解説します。
事業報告書で特に確認されるポイント
事業報告書(様式第11号)では、次のような内容を報告します。
- 派遣労働者数
- 派遣先事業所数
- 派遣料金・賃金の状況
- 派遣事業の売上高
- キャリアアップ教育訓練の実施状況
とくに注意が必要なのが、労使協定方式(派遣法30条の4)を採用している場合です。この場合、事業報告書には労使協定の写しを必ず添付しなければなりません。就業規則や賃金規程を引用している場合は、その該当箇所の添付も求められます。
実務上、「協定は締結しているが添付を失念していた」というケースが少なくなく、是正指導の典型例となっています。
なお、事業報告書の提出期限は、事業年度終了後、最初に到来する毎年6月30日とされており、こちらも期限管理が重要です。
収支決算書と決算書添付の落とし穴
収支決算書(様式第12号)は、派遣事業の財務状況を把握するための報告です。
法人の場合、収支決算書の代わりに貸借対照表・損益計算書の提出が可能とされていますが、ここで注意すべき点があります。それは、派遣事業に係る売上が判別できることです。
本業が複数ある企業で、派遣事業の売上が決算書上で不明確な場合、追加資料の提出や説明を求められることがあります。通知でも「可能な限り事業区分(セグメント)ごとの記載が望ましい」とされており、実務対応が重要です。
収支決算書の提出期限は、事業年度終了後3か月以内です。事業報告書とは期限が異なるため、混同しないよう注意が必要です。
関係派遣先(グループ内派遣)80%規制
本資料では、関係派遣先への派遣割合が80%を超えてはならないという規制についても、詳しく解説されています。
グループ企業内への派遣ばかりを行うと、派遣会社が「第二人事部」と化し、派遣制度の趣旨に反すると評価されるおそれがあります。そのため、親会社・子会社・実質的支配関係にある企業への派遣が全体の80%以下であることが求められます。
形式的な資本関係だけでなく、実質的な支配関係も判断要素となる点は、派遣元事業主として押さえておくべき重要ポイントです。
業報告は「形式」ではなく「評価」の対象
事業報告・収支決算は、単なる事務作業ではありません。
内容次第では、
- 労使協定方式の適正性
- 派遣料金と賃金のバランス
- 派遣事業の健全性
といった点が総合的に評価され、行政指導・業務改善命令につながる可能性もあります。だからこそ、毎年の報告を「前年踏襲」で済ませるのではなく、法改正や通知を踏まえた見直しが欠かせません。
派遣元事業主様向けサービスのご案内
HRストーリーズ社会保険労務士法人では、派遣事業に特化した社労士として、次のような支援を行っています。
- 事業報告書・収支決算書の作成サポート
- 労使協定方式に関する点検・添付資料チェック(※労使協定方式の構築からサポート可)
- 管轄労働局への提出代行・事前相談対応
- 行政調査・是正指導に備えた事前レビュー
「初めてで不安がある」「毎年これで正しいのか迷う」「行政指導を未然に防ぎたい」
そのような派遣元事業主様は、ぜひ一度ご相談ください。
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