労働者派遣法では、すべての業務に派遣社員を使えるわけではありません。安全性や公共性、雇用の安定確保の観点から、派遣が原則禁止されている業務(適用除外業務)が明確に定められています。
現場では「これは派遣で大丈夫だと思っていた」「請負のつもりだったが派遣と判断された」といった声も多く、認識違いが法違反につながりやすい分野です。ここでは、派遣事業を運営するうえで必ず押さえておくべき禁止業務の内容と実務上の注意点を解説します。
1.建設業務(労働者派遣法第4条)
まず代表的なのが建設業務です。土木・建築に関する作業は、原則として労働者派遣が禁止されています。
たとえば、以下のような業務は派遣不可です。
- 建設現場での施工・組立・解体作業
- 型枠工事、鉄筋組立、足場作業
- 重機を用いた現場作業
理由は、安全管理の一元化が不可欠であること、そして雇用の安定確保の必要性にあります。
なお、現場事務所での一般事務や設計補助、施工管理技術者等は、建設業務そのものに該当しなければ派遣可能な場合もありますが、「現場にいる=建設業務」と短絡的に判断するのは危険です。業務内容を精緻に切り分ける必要があります。
2.港湾運送業務
次に、港湾運送業務も派遣禁止業務です。荷役作業や船内荷役、沿岸荷役など、港湾労働法の適用を受ける業務については、原則として派遣社員を就かせることはできません。
港湾労働は、需給調整や安全確保の観点から専門の制度設計がなされており、派遣という形態はなじまないとされています。
3.警備業務
警備業務も派遣禁止です。施設警備、交通誘導、雑踏警備など、自らの判断で人や物の安全を守る業務については、指揮命令系統の明確性が求められるため、派遣労働は認められていません。
特に注意が必要なのは、「受付+警備」「巡回+軽作業」などの複合業務です。実質的に警備行為を行っていれば、派遣不可と判断されます。
4.病院等における医療関連業務(一部例外あり)
医師・看護師などの医療行為そのものは派遣禁止が原則です。ただし、産前産後休業等の代替や紹介予定派遣など、限定的な例外が認められています。
また、医療事務や看護補助などについても、「患者対応の内容」「医療行為との一体性」によって判断が分かれるため、慎重な業務設計が欠かせません。
5.適用除外業務で最大のリスクは「名ばかり請負」
派遣禁止業務に関連して特に問題となるのが、偽装請負です。「請負契約にしているから大丈夫」と考えていても、実態として派遣先が指揮命令を行っていれば、**労働者派遣法違反(無許可派遣)**と判断される可能性があります。
違反した場合には、
- 労働者派遣事業の業務改善命令・停止命令
- 厚労省からの企業名公表
- 派遣先・派遣元双方への行政指導
など、事業継続に深刻な影響を及ぼします。
まとめ:禁止業務の判断は「業種」ではなく「業務内容」
派遣が可能かどうかは、単なる業界名ではなく、実際に何をさせるのか(業務内容)で判断されます。「グレーだから様子見」「慣行だから大丈夫」といった判断は、もはや通用しません。
派遣事業においては、契約書・就業条件・現場運用の三位一体での法令適合が不可欠です。
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- 派遣可能/不可業務の事前チェック
- 派遣契約書・就業規則・労使協定の整備
- 偽装請負・指揮命令リスクの診断
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